会頭Message


 現在の産業や経済などについて、犬山商工会議所 会頭が
思ったこと・話したことを月に1回程度掲載します。


袖ふり合う縁を活かす

2018年12月 1日

 我が国経済は、堅調な企業業績、雇用・所得環境の改善に支えられて緩やかな回復が続いております。GDPも年度ベースで1%程度の成長が見込まれており、「実感なき景気回復」と言われて久しいものの、このままで推移すれば、来年1月には"いざなみ景気"を超えて戦後最長の景気拡大期間を記録することになります。とは申せ、中間選挙を終えた米国トランプ政権の貿易政策に大きな変化は期待できず、今後、我が国経済が厳しい局面を迎える懸念は、払拭されておりません。

 こうした中、11月14日、世界人口の約50%、GDP及び世界貿易の約30%を占める広域経済圏の構築を目指す、東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ))首脳会議がシンガポールにおいて開催されました。5年越しの交渉の末、年内妥結への期待が高まっておりましたが、「2019年に妥結する決意である」旨の共同首脳声明を発表するに留まり、交渉の決着は、来年に持ち越されました。米国がTPPから離脱した今こそ、一国主義、保護貿易主義を標ぼうする米国に対し、各国が連携して自由貿易を維持、推進して行こうという強いメッセージを示す意味もあり、その早期発効が強く望まれるところであります。

 さて、先頃、恒例となっております、石垣市商工会との友好親善を深めるため、石垣市を訪問して参りました。当会議所と石垣市商工会との交流は、昭和56年、名鉄が石垣市に「八重山民俗園」というテーマパークを開園したことを機に、同年、両者間で姉妹提携を結んだことに端を発します。以来、相互理解と産業・文化交流の促進によりそれぞれの地域経済の発展等を図るべく活動を続け現在に至っております。今では、こうした経緯を知る人も少なくなってきておりますが、今日、当然のごとく行われている、犬山と石垣間の様々な面での交流・連携は、日本最南端・最西端にできたテーマパークを縁に、連綿と発展させてきたものであります。"小才は、縁に出会って縁に気付かず。中才は、縁に気付いて縁を活かさず。大才は、袖すり合うた縁をも活かす。"という柳生宗矩の言葉は、どんな些細な関わり合いでも、それを"縁"として活用する能力の大切さを示唆するものとして有名ですが、けだし、当会議所(当時は、商工会)の諸先達は、その一例を示されたものと改めて賞賛の念を禁じ得ません。

 国家間の活動から企業、個人の活動まで、あらゆる局面において、小さなご縁(チャンス)を見逃さず、これを最大限に活かすことができるように心がけて行きたいものであります。

"全員野球"でガンバロー

2018年11月 1日

 10月2日、第4次安倍内閣が発足し、安倍首相は、これを「全員野球内閣」と称したことは、ご案内のとおりであります。もとより"全員野球"は、高校野球の用語のようですが、比喩的に、関係者全員が一致団結して事に当ることを表して使われる言葉であります。高齢化等により足腰の衰えが目立つ我が国チームに対し、海外の強豪チームから政治的・経済的な変化球が次から次へと飛来する中、安倍監督及びコーチ陣には、チームメートの体力増強に努め、的確にボールを打ち返すことができるような采配振りを期待するところであります。これに先立つ10月1日、免疫療法の研究でノーベル医学・生理学賞の受賞が決まった本庶教授は、あなたのお蔭で重い病気から元気になったと感謝されるのが何よりもうれしい、と話しておられます。安倍内閣には、あなたのお蔭で日本は強く元気になりましたと私たちが言うことができるように頑張ってもらいたいと思っております。

 また、同じ10月1日には、「犬山市産業振興基本条例」が施行されました。本条例は、これからの犬山市の産業の振興、実質的には中小・小規模事業の発展についての基本的な在り方を宣言、規定したものであります。本条例において、当会議所は、犬山市の産業振興を進めるため、地域資源の利・活用、産業人材の育成・確保、事業承継と後継者の確保、創業や新産業分野への進出といった面で事業者を支援することが規定されております。併せて、事業者に対しては、商工会議所事業への積極的な参画とその活用を求める旨が規定されております。また、条例の前文に、産業の振興には地域経済に携わる者全員が連携、協働して取り組むことが必要であることがうたわれており、当会議所に掛けられる期待と責務がより重いものになっていることを役・職員一同改めて噛み締め、全員野球の精神をもって、与えられた役割を果たして行く所存でおります。

 こうした中、当会議所は、諸般の事業の推進に努めておりますが、その一環として、ビジネス実務で要求される人材の育成に向けて、簿記、そろ盤を始めとした検定事業を実施しております。今般、この検定事業の推進面における功績が認められ、去る9月20日、第128回日本商工会議所会員総会の開催に際し、私が、同じく表彰される18の商工会議所を代表して三村日本商工会議所会頭から表彰状を授与される栄に浴しました。幾分なりとも地域事業者の皆様のお役にたてれば幸いであるとの思いを強くした次第であります。

 当会議所といたしましては、支援する事業者からお蔭様で元気になったと感謝されるような存在になること目指して、切磋琢磨して参る所存でおりますので、皆様方のご支援、ご協力をお願いする次第であります。

疾風に、勁草を知る

2018年10月 1日

先頃、日本列島は、大阪を中心に猛威を振い今世紀最強といわれる台風21号と、震度7の激しさで北海道を襲った地震とに、立て続けて翻弄されました。自然災害の脅威と被害の大きさに驚くとともに、被災された方々には、唯々心からのお見舞いと励ましの意を表するほかありません。

 国際情勢に目を転じますと、昨年の今頃には最悪の場合は核戦争が勃発するとまで危惧された米国と北朝鮮の関係は、ご案内のとおり、首脳会談が開催され、ひと先ず武力戦争の危機は回避されましたが、まだまだ予断は許されない情勢にあります。一方、貿易問題を争点とした米国と中国との関係が悪化し、両国の間は、関税引き上げ抗争がエスカレートし、今や貿易戦争といわれる事態にまで発展しております。米トランプ政権の対中国政策の見方には、もはや貿易摩擦、経済問題の次元ではなく国家安全保障の次元から実施されているとの論調もみられる中、米中両国関係の成り行き次第では、我が国も難しい状況に置かれる局面もあることが懸念されるところであります。

 以上のように、私達は、地震、台風、異常気象など自然災害面における困難や国際政治・経済面における困難など、私達が直接的にどうこうできない次元における大きな困難に意図せずに巻き込まれる機会が増えております。また、少子高齢化等に起因する社会、経済、財政的側面における諸々の苦境など枚挙にいとまがない状況にあります。

こうした困難等に遭遇した場合、人は、気力を無くし、成るに任せて無抵抗に流されるか、あるいは、知恵、勇気、忍耐を駆使して何とか乗り切ろうとするのか。私は、後者でありたいと思っております。中国の故事ことわざの一つに、「疾風に勁草を知る」というものがあります。激しい風が吹き弱い草が倒れ伏して初めて、風に倒れない強い草の存在が明らかになるというたとえから、困難に出会って初めて、人の真の強さ・価値が分かるといった意味に理解されております。困難や非常時の中であればこそ、その人の存在感が発揮されるということであるならば、人は、困難を乗り切ることができる存在にこそならなければならないと思う次第であります。

正に、いつ何時どのような「疾風」が吹くか分からない時代に生きている私達は、良く努力して、いかなる困難、逆境にも耐えられる強い人間として、また経営者として、更に言えば商工会議所として、それぞれその存在感を示す、言わば「勁草」になるという気概を持ち続けて行きたいものであります。

ビジネスは"白書"にあり

2018年09月 1日

"命に危険な"とか"災害レベルの"といった形容がされる猛暑となった今夏、気象関連情報から目が離せない日が続きました。この猛暑が経済活動に及ぼす影響として、7-9月の平均気温が1度上昇すると同期間の我が国の家計消費支出が3200億円ほど増加するとの試算がありますが、国内1、2を争う最高気温を記録する当地域の寄与度はどれ程なのか、などと今夏の猛暑効果について思いを巡らせてしまいます。

さて、先頃、犬山商工会議所は、事業活動の一環として、中小企業白書の説明会を実施しました。ご承知のとおり、中小企業白書は、中小企業基本法に基づき、政府(中小企業庁)が作成する中小企業の動向や関連施策等に関する年次報告書でありますが、今回の2018年版で55回を数えております。

 同白書では、中小企業の現状について、経常利益が過去最高水準にあり景況感も改善傾向にあるものの、労働生産性の面において大企業との格差が拡大しており、また人材不足や後継者難の深刻化といった経営課題に直面していると分析されております。こうした現状を受け、「生産性革命」をテーマに、業務プロセスの見直し、人材活用・IT活用の工夫、設備投資、M&A事業承継など、生産性の向上に向けた取り組みについて、そのポイント、取り組み事例を紹介しております。とりわけ、小規模事業者については、経営者に業務が集中する実態を踏まえたIT導入による業務の効率化や、施策を浸透させる上で商工会議所等支援機関の役割の強化が示されております。

 中小企業白書は、事業者にとって、掲載された事例を参考にして経営上のヒントやアイデアを発見する、各種の資料データを入手する、利用できる支援施策を見出だすなどのツールとして、日々の経営に役立つものといえます。2018年版は、中小企業庁のホーム・ページから無料でダウン・ロードできます。500ページを超える大部なものですが、折をみて目を通して頂くことをお勧めします。ちなみに、今回の白書は、作成された意図どおり、中小・小規模事業者の具体的な取り組み事例が豊富に紹介されており、生産性の向上に向けたヒントが得られる実践的なものとして仕上がっているように思われます。

 当商工会議所といたしましては、地域中小・小規模事業者の生産性向上などの経営課題の解決に向けて、設備投資等補助事業を始め様々な支援策を駆使し、猛暑に引けを取らない熱い気概を持って、期待される役割を果たして参る所存でおります。皆様におかれましても、よろず困り事があれば、「最も身近な支援機関」である当商工会議所に相談して頂ければ幸いに存じます。

「勝つと思うな、思えば負けよ」

2018年08月 1日

今年の梅雨は、西日本を中心に甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」という有難くない置き土産を残し、平年より早いペースで去りました。

我が国の経済は、輸出が緩やかに増加し、設備投資が人材不足を背景とした合理化・省力化投資を中心に増加基調を維持する中、個人消費の持ち直し傾向も続いており、先行き中東や北朝鮮を巡る情勢の変化、米国の保護主義政策の動向といった海外要因リスクが懸念されるものの、大企業を中心に、緩やかな景気の回復が続いております。一方、中小・小規模企業にあっては、人材不足、後継者不足といった構造的な経営課題を抱え、日々の経営に苦心している事業者も少なくありません。こうした中、当会議所におきましては、第2四半期を迎え、小規模事業者の経営発達支援事業の仕上げ、事業承継、生産性の向上に向けた新規の支援事業などに力点を置いて、事業の実施を加速化することとしております。

さて、皆様にも鮮烈な記憶として残っているのではないかと思いますが、サッカーワールドカップ、日本チームは、8強入りが掛った対ベルギー戦において2点を先取し、これで勝ったと思う間もなく逆転負けを喫しました。正に、「勝つと思うな、思えば負けよ」を地で行くこの展開を目の当たりにして、いろいろ考えさせられました。ちなみに、勝ち負けと言えば、吉田兼好の「徒然草」に、勝負事は、勝とうとして行ってはいけない、負けないように行うことが極意であるという話がでてきますが、兼好は、この極意は個人から国家に至るあらゆるレベルの事業、活動にも当てはまる理であると述べております。

 この極意を企業経営に当てはめてみますと、事業の大ヒット、華々しく飛躍的な発展といった、専ら「勝つ」ことを目指すより、「負けない」ことに重点を置き、地道で持続的な発展を心掛けるほうが、結果的には良いといった意味に捉えることも可能であります。不敗の戦略書として、経済誌や経営書においてしばしば取り上げられる、「孫子」の兵法にも一脈相通ずるところがあろうかと思われます。現実の社会生活においては、「勝つ」と「負ける」の二極化だけでは計ることのできない第3の状態として「負けない」という在り方が説得的に聞こえるのは私だけでしょうか。人口の減少、世界経済における相対的地位の低下といった、昨今の我が国が置かれている内外の事業環境の下では、傾聴に値する言葉ではないかと思っております。

会議所といたしましても、「負けない」経営の確立を一つの視点として。事業者の支援に努めていくことの意義を改めて噛みしめている次第であります。

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