会頭Message


 現在の産業や経済などについて、犬山商工会議所 会頭が
思ったこと・話したことを月に1回程度掲載します。


ビジネスは"白書"にあり

2018年09月 1日

"命に危険な"とか"災害レベルの"といった形容がされる猛暑となった今夏、気象関連情報から目が離せない日が続きました。この猛暑が経済活動に及ぼす影響として、7-9月の平均気温が1度上昇すると同期間の我が国の家計消費支出が3200億円ほど増加するとの試算がありますが、国内1、2を争う最高気温を記録する当地域の寄与度はどれ程なのか、などと今夏の猛暑効果について思いを巡らせてしまいます。

さて、先頃、犬山商工会議所は、事業活動の一環として、中小企業白書の説明会を実施しました。ご承知のとおり、中小企業白書は、中小企業基本法に基づき、政府(中小企業庁)が作成する中小企業の動向や関連施策等に関する年次報告書でありますが、今回の2018年版で55回を数えております。

 同白書では、中小企業の現状について、経常利益が過去最高水準にあり景況感も改善傾向にあるものの、労働生産性の面において大企業との格差が拡大しており、また人材不足や後継者難の深刻化といった経営課題に直面していると分析されております。こうした現状を受け、「生産性革命」をテーマに、業務プロセスの見直し、人材活用・IT活用の工夫、設備投資、M&A事業承継など、生産性の向上に向けた取り組みについて、そのポイント、取り組み事例を紹介しております。とりわけ、小規模事業者については、経営者に業務が集中する実態を踏まえたIT導入による業務の効率化や、施策を浸透させる上で商工会議所等支援機関の役割の強化が示されております。

 中小企業白書は、事業者にとって、掲載された事例を参考にして経営上のヒントやアイデアを発見する、各種の資料データを入手する、利用できる支援施策を見出だすなどのツールとして、日々の経営に役立つものといえます。2018年版は、中小企業庁のホーム・ページから無料でダウン・ロードできます。500ページを超える大部なものですが、折をみて目を通して頂くことをお勧めします。ちなみに、今回の白書は、作成された意図どおり、中小・小規模事業者の具体的な取り組み事例が豊富に紹介されており、生産性の向上に向けたヒントが得られる実践的なものとして仕上がっているように思われます。

 当商工会議所といたしましては、地域中小・小規模事業者の生産性向上などの経営課題の解決に向けて、設備投資等補助事業を始め様々な支援策を駆使し、猛暑に引けを取らない熱い気概を持って、期待される役割を果たして参る所存でおります。皆様におかれましても、よろず困り事があれば、「最も身近な支援機関」である当商工会議所に相談して頂ければ幸いに存じます。

「勝つと思うな、思えば負けよ」

2018年08月 1日

今年の梅雨は、西日本を中心に甚大な被害をもたらした「平成30年7月豪雨」という有難くない置き土産を残し、平年より早いペースで去りました。

我が国の経済は、輸出が緩やかに増加し、設備投資が人材不足を背景とした合理化・省力化投資を中心に増加基調を維持する中、個人消費の持ち直し傾向も続いており、先行き中東や北朝鮮を巡る情勢の変化、米国の保護主義政策の動向といった海外要因リスクが懸念されるものの、大企業を中心に、緩やかな景気の回復が続いております。一方、中小・小規模企業にあっては、人材不足、後継者不足といった構造的な経営課題を抱え、日々の経営に苦心している事業者も少なくありません。こうした中、当会議所におきましては、第2四半期を迎え、小規模事業者の経営発達支援事業の仕上げ、事業承継、生産性の向上に向けた新規の支援事業などに力点を置いて、事業の実施を加速化することとしております。

さて、皆様にも鮮烈な記憶として残っているのではないかと思いますが、サッカーワールドカップ、日本チームは、8強入りが掛った対ベルギー戦において2点を先取し、これで勝ったと思う間もなく逆転負けを喫しました。正に、「勝つと思うな、思えば負けよ」を地で行くこの展開を目の当たりにして、いろいろ考えさせられました。ちなみに、勝ち負けと言えば、吉田兼好の「徒然草」に、勝負事は、勝とうとして行ってはいけない、負けないように行うことが極意であるという話がでてきますが、兼好は、この極意は個人から国家に至るあらゆるレベルの事業、活動にも当てはまる理であると述べております。

 この極意を企業経営に当てはめてみますと、事業の大ヒット、華々しく飛躍的な発展といった、専ら「勝つ」ことを目指すより、「負けない」ことに重点を置き、地道で持続的な発展を心掛けるほうが、結果的には良いといった意味に捉えることも可能であります。不敗の戦略書として、経済誌や経営書においてしばしば取り上げられる、「孫子」の兵法にも一脈相通ずるところがあろうかと思われます。現実の社会生活においては、「勝つ」と「負ける」の二極化だけでは計ることのできない第3の状態として「負けない」という在り方が説得的に聞こえるのは私だけでしょうか。人口の減少、世界経済における相対的地位の低下といった、昨今の我が国が置かれている内外の事業環境の下では、傾聴に値する言葉ではないかと思っております。

会議所といたしましても、「負けない」経営の確立を一つの視点として。事業者の支援に努めていくことの意義を改めて噛みしめている次第であります。

民信無くば立たず

2018年07月 1日

 梅雨空が続いております。
 相互の不信から一時は戦争勃発が危惧された米朝関係でしたが、6月12日、トランプ大統領と金委員長の会談が実現し、緊張緩和への期待が高まってきた状況に安堵する思いでおります。今後の成り行きについては、共同声明の内容等を巡って議論は様々ですが、声明にある朝鮮半島の完全非核化に向けた作業の前進は、一にも二にも両国間の信頼の醸成に掛かっていることは申し上げるまでもありません。いずれにせよ、これが国際政治における梅雨の晴れ間に終わることなく、このまま梅雨明けとなることを強く念願する次第であります。
 一方、国内政治はといえば、大臣や政府職員の言動に起因する政府や政府機関に対する不信の念の増幅が国政機能の十全な発揮を阻害しているといった憂慮すべき事態にあることは、先にも述べたところであります。政治で重要なことは何かと問われた孔子は、十分な食の確保、十分な軍備の保有、政権への信頼の確保の3つであるとしつつ、この中でも、為政者に対する民の信頼が最も重要であり、これ(信頼)がなければ国は立ち行かないと答えております。国政に携わる者には、心してほしい言葉であります。
 顧みて民間の企業や団体の場合はといえば、直近でも、重大な反則行為の日大のアメフト部を筆頭に、家電リサイクル法違反のサカイ引越センター、データ改ざんの三菱マテリアル、酒税法違反のアサヒビール、個人情報流失の森永乳業、不正融資のスルガ銀行など、不祥事の発生は、それこそ枚挙にいとまがない状態となっております。こうした不祥事においては、一つ対応を誤れば、一瞬にして組織の信用・信頼を大きく損ない組織そのものの存亡問題に発展することも無きにしも非ず、であります。話はくどくなりますが、組織に属する個人への信頼がその組織への信頼にどう影響するかについての興味深い研究があります。結論は、「個人への信頼」の向上は、「組織への信頼」にあまり反映しないが、「個人への信頼」の低下は、直接的に強く反映するというものであります。要するに、個人に対する信頼が欠如すると、その人が所属する組織に対する信頼も欠如するということであります。
 犬山商工会義所は、申し上げるまでもなく、会員の皆様方の信頼に支えられ、当地域における商工業の発展や社会福祉の増進への寄与を目的として諸事業を実施する団体であります。私を始めとした犬山商工会議所に属する役・職員といたしましては、地域の皆様方の信頼を損なうようなことが無いように精進に努めるとともに、実施する事業の成果を重ね、その信頼に応えていかなければならないものと改めて気を引き締めている次第であります。
 今後ともご支援の程、よろしくお願いいたします。

国政の働き方改革が必要?

2018年06月 1日

6月、1年のうちで唯一、国民の祝日が無い月に入ります。休日が少ない分、有給休暇が取りやすい月ではあるかもしれません。

さて、国政では、いわゆる「モリカケ問題」に揺れ、5月の連休を挟んで3週間近くも国会審議が停滞し、政府が最重要法案と位置付けている「働き方改革関連法案」の行方が気になるところであります。
我が国では、経済のグローバル化や少子高齢化などを背景に経済が活力を欠く中にあって、育児や介護、過労死につながる長時間労働など、生活と働き方にまつわる問題が大きくクローズアップされております。こうした中、「ワーク・ライフ・バランスの実現」と労働生産性の向上を目指して「働き方」を改革する必要性が喧伝され、労働基準法を始めとした8つの法律の改正案が「働き方改革関連法案」として今国会に提出されたことはご案内のとおりであります。
エンゲルスが言うように『労働が猿を人に進化させた』かどうかはさておき、労働は、人が生きていくことの本質にかかわる問題であると言っても過言ではないと思っております。そうだとすれば、労働は、我々の暮らしを支え、生きがいや喜びをもたらすと同時に、国の活力を高め持続可能な社会を実現させるものでなければなりません。この意味で、「働き方」は、その時代にあった形で進化させていかなければならないものと考えております。
閑話休題、改めてこの法案の中身を見ますと、〝時間外労働の上限規制〟  〝月60時間を超える残業に係る割増賃金率の中小企業への適用猶予措置の廃止〟〝有給休暇の取得奨励〟〝高度プロフェッショナル制度の新設〟〝同一労働同一賃金の制度化〟など、人手不足の影響を受けている中小企業にとっては厳しい対応を迫られると思われる措置も少なくありません。一方で国や県において、人手不足や働き方改革について悩んでいる中小企業に対し、〝「働き方改革推進センター」等を窓口とした相談体制の整備〟〝生産性の向上及び業務の効率化等のための設備投資・IT導入や人材の育成に対する補助・助成〟など、様々な支援策が用意されております。ともあれ、中小企業には法の施行期日の面で一部猶予があるとは言え、準備を怠るわけには参りません。我々地域の中小企業としては、こうした事態を、働き方・働かせ方の在り方について再考するとともに、女性・高齢者・外国人等多様な労働力やAIの活用を視野に入れつつ、優れた人材とメリハリのきいた労働を確保することにより生産性の向上を図る好機ととらえるべきであると考える次第であります。
 意気込みを持って本稿を書いている正にこの時、又ぞろ本法案に係る厚労省の調査データの不適切さが問題となり、今国会での成立に暗雲が懸ってきました。これにつけても、昨今の国政状況を極めて遺憾に思うのは私だけでしょうか。

武力戦争はダメ、経済戦争がマシ

2018年05月 1日

今年の犬山祭りは、懸念された雨こそ降らなかったものの、花は散り、やや冷気が流れ込む中での幕開けとなりました。とはいえ城下町地区は熱気にあふれ、絢爛な山車の巡行やカラクリの競演は多くの人々を魅了し、2日間の行事を無事終了することができました。関係者の一人として、祭りの後の一抹の寂しさとともに、ホッとしているところであります。

さて、「アメリカ・ファースト」を標ぼうするトランプ米大統領は、安全保障に対する脅威を理由に、鉄鋼・アルミ製品の輸入に対し追加関税を課す方針を表明しました。更に、知的財産権の侵害等を理由に、ハイテク、最先端分野における中国からの輸入品を対象に制裁措置を発動する大統領令に署名をしました。これに対し中国は、相応の対抗措置をとると応酬しており、両国が貿易戦争に突入するのではないかとの懸念が広がっております。米国のこの度の措置の背景としては、巨額な貿易赤字の是正もさることながら、国際社会における中国の台頭、米国の覇権への挑戦に対する危機感があるとの見方も否めません。近時、中国の経済力は急速に拡大し、今や、量と質の両面において米国に迫る勢いを見せている状況に鑑みれば、米国に産業面で中国を封じ込める意図があるとしても何ら不思議ではありません。

英国の著名な歴史学者が、かつて「主要な国際戦争は、貿易をめぐる戦争であった」(E.H.カー)と述べたように、経済は、一国の安全保障に大きく関係するものであり、グローバル化の下においてその重要性は一層増しております。経済力は、技術力、軍事力を向上させるなど国のパワーの源泉であり、安全保障の目的であると同時に、また、昨今の北朝鮮に対する経済制裁のように、安全保障のための手段としても利用されます。とすれば、国際社会において経済政策と戦争は、極めて密接な関係にあると言えます。

 いずれの国も、覇権を維持、強化するために貿易戦争を仕掛け、それがエスカレートすることによって「武力による熱い戦争」を引き起こすことは、絶対にあってはなりません。いずれの戦争にせよ、勃発すれば当事国のみならず全世界がとばっちりを受けますが、「貿易戦争」と「熱い戦争」とでは被る惨禍は、天と地ほどの差があります。この意味において、個人的には、「ミサイルを使う戦争」ではなく「関税を使う戦争」で済まされる限りにおいて、まだ良しとすべきかとも思っております。

 ロス米商務長官は、今回の措置について、「第3次世界大戦に突入」しようとしているのではなく、「交渉による解決」への扉は開いている、と述べておりますが、両国の理性的な対応に期待をかける次第であります。

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