会頭Message


 現在の産業や経済などについて、犬山商工会議所 会頭が
思ったこと・話したことを月に1回程度掲載します。


米中貿易戦争は、世界の平和を脅かす?

2019年06月 1日

2019年(平成31年)4月30日をもって、第125代天皇明仁(あきひと)陛下が退位され、その翌日の5月1日に皇太子徳仁(なるひと)親王が第126代の天皇に即位されました。第126代徳仁天皇は、天皇としての初めてのお言葉で「象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望します」と述べられました。被災地慰問や先の大戦の記憶の継承、環境問題といった各方面での今後のお取り組みについて、天皇、皇后両陛下に大いに期待しています。

世界の平和という点で、このところの米中間での深刻な貿易摩擦問題、いわゆる米中貿易戦争は足元でエスカレートし、米中のみならず、世界経済の下振れ圧力の要因にもなり、世界の平和を脅かすものとなりつつあります。国際通貨基金(IMF)は、トランプ政権による追加関税が与え得る世界経済への影響を試算し、昨年7月18日に公表しています。IMFがその試算の前提としたのは、米国がすでに実施した鉄鋼輸入制限、中国の知的財産権侵害を理由とした年500憶ドル相当の中国製品への追加関税に加えて、米トランプ政権が検討している2000憶ドルの対中追加関税(2018年9月24日に発動済み)、輸入車への25%の追加関税が、今後実際に発動されるとするものです。この場合、世界のGDPは2年間で0.5%程度押し下げられる計算となるとしています。日本もGDPが0.6%の押し下げ効果になるとされています。制裁関税を仕掛けた張本人である米国については、最も大きな影響を受け、輸入価格の上昇による個人消費の悪化などから、GDPは0.8%押し下げられると試算されています。また、IMFは本年4月3日に発表した、世界経済見通しで米中貿易協議が決裂し、双方が全品目に25%の追加関税を発動すれば、2国間貿易は長期的に30~70%落ち込む恐れがあるとの試算を示しました。製造業の国際分業が広がる中、「関税や貿易戦争の影響が世界全体に波及するリスクが高まる」と警鐘を鳴らしています。したがって、今回の米中貿易戦争は誰も得るところは無いということがいえます。

米国が問題にする中国の様々な政策のうち、知的財産に関わる政策は、知的財産の十分な保護を命じたWTOの貿易関連知的財産権協定に違反する可能性の高いものですが、だからといって米国が行っている、一方的に制裁関税を適用することは、WTOのルールに違反しているものと認められます。日本としては、米国が問題にする中国の政策のうち、WTOのルールに違反する疑いのあるものについては、あくまでもWTOの紛争解決手続きを通じて是正を求めるという原則にしたがって行動することが日本のとるべき対応と考えます。貿易赤字にせよ、産業政策にせよ、明確な国際ルールが存在しないなかで、一方的に他国の政策を不公正と判定して、制裁関税を適用することは、ルールに基づく貿易自由化を柱とするWTO体制を根底から揺るがすものと考えます。ルールの不備を埋めルールに基づく貿易自由化を柱とするWTO体制を強化する方向に努力することが必要と考えます。

世界中で戦争や飢饉などの危難がなく、皆穏やかで、世界中が平和となることを願ってやみません。

連携と交流により、思いもよらぬ花が咲く

2019年05月 1日

犬山祭りを原動力に、希望に満ち溢れた新しい地域・時代を切り開いていく。

 菅官房長官は、本年4月1日に首相官邸で記者会見し、新しい元号を「令和」(れいわ)と発表しました。万葉集にある歌の序文「初春の令月にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かお)らす」(書下し文)から二文字をとったとのことです。その後行われた安倍首相の談話の中で、「令和(れいわ)」には人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められている、との説明がありました。元号を改める政令は即日公布され、皇太子が新天皇に即位する5月1日に施行されます。前号の会頭Messageで「元号が新しくなることは、新しい時代のスタートを私達に強く意識させます」と申し上げましたが、今回、元号が「令和(れいわ)」と決定され、新元号に込められた意味や、国民へのメッセージを首相談話として拝聴したわけでありますが、「希望に満ち溢れた新しい時代を切り開いていくぞ、と日本人一人一人が決意しなければならない」と改めて感じずにはいられませんでした。

さて、平成が最後となり、新しい元号が令和(れいわ)と発表された直後の4月6日(土)と7日(日)の両日にわたって、犬山祭りが開催されました。今年の犬山祭は、桜の見ごろとタイミングがピッタリ合い、過去に例を見ないほどの大勢の見物客でにぎわいました。例年にも増して熱気にあふれ、高さ8メートルの豪華絢爛な車山(やま)13両の巡行やカラクリ人形の妙技が多くの人々を魅了し、2日間の行事が成功裏のうちに終了しました。今後とも、犬山祭とこれを担う人一人一人が、希望に満ち溢れた新しい地域・時代を犬山祭を原動力として切り開いていくぞと、決意しなければならないと改めて感じた次第です。

犬山祭真っ盛りの中、当商工会議所では、友好関係にある商工会議所並びに商工会、行政等多様な団体間でのネットワークづくりの一環として、大韓民国 咸安(ハマン)商工会議所(当該商工会議所のほか、沖縄県・石垣市商工会、宮崎県・日南商工会議所、富山県・立山舟橋商工会)を含めた合同の友好交流会を開催しました。合同友好交流会そのものは、非常に和やかな雰囲気の中、情報交換や意見交換などが行われ、終始、友好的でした。しかしながら、このところの、我が国と韓国との「外交的不和が経済界にも広がる兆しが現れている」(2019.4.8(月)9:29配信 中央日報)との記事に接し、個人的には、いささか、心配に感じているところです。やっと緊密になり、果実を生み出す経済連携活動に発展しつつある咸安(ハマン)商工会議所との交流に大きな影響を及ぼすのでないかと懸念しています。

変ずれば通ず

2019年04月 1日

 2019年度がスタートします。本年度は、いろいろ新しいことが重なり、我が国の政治・経済・社会状況に変わり目が訪れる年となるのではないかと、期待半分、心配半分の心境でおります。

 近いところでは、今上天皇の退位に伴い、新天皇が即位され、改元が行われます。「各時代を表すインデックス」とも言われる元号が新しくなることは、新しい時代のスタートを私達に強く意識させるところであります。

 国内政治面では、地方統一選挙、参議院普通選挙が行われますが、この結果によっては、憲法改正を巡る政治、社会情勢に少なからぬ変化が生ずることが予想されるところであります。また、国際的に重大な事柄としては、貿易問題を巡る米国・中国間の交渉と核の完全廃棄を争点とする米国・北朝鮮間の交渉があります。これらは、その成り行きがどのようなものになるにせよ、今後の我が国の経済環境及び安全保障環境に大きな変化をもたらすことは必至であると考えております。更に、我が国の景気動向について見ますと、ここに来て、中国経済の減速等を背景に、景気動向指数が悪化し、基調判断が4年ぶりに下方修正されるに至り、いざなみ景気を超えた「戦後最長の景気回復」という政府の景気判断の是非が問われる事態となっております。今後、国際政治・経済情勢の成り行きに加え、10月の消費税引き上げによる影響が鍵となりますが、本年度が我が国経済にとっての正念場となることは否めないと考えております。

 こうした中、当会議所にとりましても本年度は、変わり目の年であります。10月末の議員、役員の任期満了に伴い、改選が行われ、人心一新の下、11月から新しい執行体制がスタートすることとなっております。加えて、事業面では、中小企業支援の中核事業と位置付ける「小規模事業者経営発達支援事業」の「第2期計画」をスタートさせることとしております。

 一般に計画は、社会経済情勢や経営環境の変化など、身の回りの変化に対応するために策定されるものであり、事業者が厳しい事業環境等の変化に対応してその事業活動をうまく変化させるためには、計画の策定とその実施が必要であることは申すまでもありません。本経営発達支援事業は、経済社会の変化の影響を受け易く、経営力の強化が必要な小規模事業者を対象に、その事業者が有する強みを見える化しこれを新しい力に変える手段として「事業計画」を策定し、その目標の達成に向けて伴走支援することに主眼を置くものであります。

 「計画の無い目標は、単なる願い事にすぎない」(サン・テグジュペリ)ということにならないよう、本年度に生ずる時代の変化を的確にとらえ、計画的に乗り切って行きたいものであります。

※「窮すれば則ち変じ、変ずれば則ち通ず、通ずれば則ち久し」(「易経」) 

"人の利"を活かそう

2019年03月 1日

 本年1月1日現在の我が国の総人口は、1億2632万人であり、ピーク時の10年前(2008年の1億2808人)から176万人減少しておりますが、例えれば、熊本県1県分の人口が消えた勘定になります。内閣府は、10年後(2029年)には1億2000万人を下回り、35年後(2053年)には1億人を割り込むものと推定しております。この様に人口の減少が進む中、我が国経済の衰退に対する警鐘音は、益々大きなものになっております。もとより、犬山市もこの警鐘の対象であることは言うまでもありません。

 こうした中、先頃開催された新春講演会において、2027年のリニア中央新幹線開業がもたらす様々なインパクトについての話しを拝聴しました。講師である家田仁氏の講演の概要は、本所報において紹介されておりますのでご一読いただければ幸いですが、本講演を機に、リニア開業を見据えて私なりに思うところの一端を述べさせていただきます。

 リニア中央新幹線の開業には、品川と名古屋を40分で結ぶなど、東・名・阪間の移動時間を激的に短縮することを背景に、東京のグローバル都市機能、名古屋の優れたものづくり機能、大阪の独自の文化、商業機能を活かしつつ三大都市圏をネットワーク化し、これまでに類を見ない巨大な社会、経済圏(「スーパー・メガリージョン」)の形成を促すことが期待されております。この圏域内においては、整備された在来新幹線、高速道路網等と相まって、大都市と地方間の時間的距離も大幅に縮まり、ビジネス、観光、居住等を目的とした人の移動、交流が増加・活発化することが予想されるところであります。名古屋圏の一端に位置する犬山が、このスーパー・メガリージョンに組み込まれることは当然としても、リニアによる時間短縮メリットを受ける地方・地域が増加することを考えれば、他地域との交流人口獲得競争は、これまで以上に激しくなることが予想されます。既にいくつかの市町では、リニア開業を踏まえたまちづくりの検討が始められております。犬山にあっても、山田市長が「リニア時代のまちづくり」の構想を表明されており、その具体的な取り組みは、今後に期待するところであります。いずれにせよ、リニアで創出される交流人口の増大効果を享受するためには、来て良し、住んでも良しと思える犬山独自の魅力を継続的に向上させる取り組みが求められることになろうかと思っております。 

 『孟子』に「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」という一節があります。犬山に人を呼ぶ込むことは、リニア開業という好機があり、観光資源等に恵まれた有利な土地であっても、この地の人々の"おもてなしの心"がなければ叶わない、という風にこの言葉を読み替えて、物事達成における"人の利"の大切さに思いを致すところであります。

利休に倣う

2019年02月 1日

 我が国への外国人旅行者数が、昨年、3000万人の大台に乗り、1つの節目を迎えました。こうした中、国は、東京オリンピックが開催される2020年にインバウンド旅行者数を4000万人にすることなどを目標とする「観光ビジョン」の実現に向けた取り組みに力を入れております。この一環として現在実施中のアクション・プログラムは、○文化財を中核とする観光拠点の整備、○景観まちづくり等景観に優れた観光資産の保全・活用、○商店街等における観光需要の獲得、○ナイトタイムの活用など新たな観光資源の活用、○古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりの推進、○多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供、○欧米豪を中心とするグローバル・キャンペーンの推進など、多岐にわたっており、犬山においては既に着手しているものもあれば、今後の課題となっている取り組みも少なくありません。

 観光地として人を引き付ける要素は、景観、文化財・歴史遺産、観光インフラ施設、グルメなど多々ありますが、これらにも増して来訪者への心のこもった対応やサービスを提供することが重要であります。とりわけ、文化、習慣の異なる見知らぬ人と人とが接することとなるインバウンド観光において、この接客姿勢が極めて大切であることは申し上げるまでもありません。インバウンドの個人旅行化、体験型観光化、地方への展開といった流れの中、犬山においても、来訪者に対する「おもてなし」の姿勢を鮮明にすることが、今、強く求められていると考えております。

 我が国において「おもてなし」の基礎を創ったと言われるのは千利休ですが、その精神は、『利休7則』として現代に伝わっております。人をもてなす心構えについては、この7則に沿っていろいろ説かれております。これらを踏まえて、私なりにこう解釈しております。①「茶は服のよきように点て」・・・相手の気持ちを考え心を込めて、②「炭は湯の沸くように置き」・・・もてなしの手順を的確に、③「花は野にあるように」・・・もてなしは自然でくどくならないように、④「夏は涼しく冬暖かに」・・・もてなす方法を工夫して、⑤「刻限は早めに」・・・もてなしはゆとりを持って、⑥「降らずとも雨の用意」・・・相手の期待を先取りして、⑦「相客に心せよ」・・・相手を立てて。

 利休十哲の一人である織田有楽斎ゆかりの「如庵」という国宝茶室三名席の一つを、京都以外において唯一有する地としての犬山であればこそ、茶の湯の神髄とも言える、人をもてなすの心の大切さを自覚したいものであります。

 今、犬山は、犬山城登閣者数60万人という過去最多記録を更新するなど、来訪者が急増しております。この機に、『利休7則』に倣って犬山の「おもてなし」力に磨きをかけ、近い将来、当地を"愛知の犬山"、"日本の犬山"として国内のみならず世界において名実ともに認知させることが私の宿願であります。

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